「詐欺業者の置き書き」というタイトルに、ぎょっとされた方もいるかもしれません。
置き書きというのは、去っていく人が残していくメモのことです。詐欺をはたらく人たちは、いつも何かしらの痕跡を残していきます。
不自然に急かす一言、やたら丁寧なのに肝心なことだけ書いていない契約書、後から見返すと「ここでおかしいと気づけたのに」と思う一行。
そういう痕跡を拾い集めて、次の誰かが同じ目に遭わないように並べておく場所。それがここです。
私について
もともとは、メディアで働きたかった人間です。
新聞社と出版社を受けて、全部落ちました。一年浪人して、もう一度受けて、また落ちました。
そのとき拾ってくれたのが、ネット広告の代理店でした。そこに11年いました。結婚して家を出て、今は専業主婦をしながら、家事の合間にこのブログを書いています。
先にはっきりさせておきますが、私は弁護士ではありません。司法書士でもありません。法律の専門家ではないです。ただの元・広告屋です。
でも、広告屋には広告屋の眺めがあります。
詐欺をやる人たちが最初にすることは、広告を出すことなんですよね。だから私たちのところには、彼らが世の中に見せる一番はじめの顔が届きます。
「絶対に儲かります」「初期費用0円」「あと3名様限定」。
ああいう文言を、11年かけて何千本と読んできました。
間違えて通してしまった広告のこと
うちの会社は、当時にしては、現代並みにコンプライアンスがうるさいところでした。
あやしい案件は基本的に通りません。数字の根拠を出せない広告主、特商法のページに返金の記載がない広告主、住所を調べたら同じ部屋に何十社も入っている広告主。そういうのは断ります。断るのも仕事のうちでした。
だから安心していたんだと思います。うちは大丈夫だと。
でも、私が自分で決裁を切れる立場になってから、数件、通しちゃったんですよね。
悪質な占いのサイト。情報商材のサイトです。
言い訳をすると、どれも書類は揃っていたんです。特商法の表記も、会社の登記も、根拠資料も。形式としては、どこにも穴がなかった。だから通しました。
やつらは、 広告代理店も騙してくるんですよね。
書類が揃っていることは、中身がまともであることの証明にはならない。当たり前の話ですが。
あの私が通してしまった広告をクリックした人が、どこかにいたはずなんです。
何人いたのか、その人たちがどうなったのか、私は知りません。知りようがない。それがずっと、喉に刺さったままになっています。
なぜ始めたのか
会社を辞めてしばらく経ったころ、知り合いから「こういう話を持ちかけられたんだけど、どう思う?」と聞かれることが何度かありました。
送られてきたページを見て、すぐに分かりました。書き方の癖が、あのころ毎日読んでいたものとそっくりで。
「それはやめたほうがいい」と伝えたら、その人は思いとどまってくれました。ほっとしたのと同時に、いやな気持ちにもなりました。たまたま私に聞いてくれたから止まっただけで、聞かなかったら止まらなかったわけで。
相談できる相手が近くにいるかどうかで結果が変わるのは、あんまりだろうと思いました。
お金が動いて、連絡が取れなくなってから取り返すのは、本当に大変です。時間もお金もかかるし、全額戻ることのほうが少ない。
一番いいのは、払う前に「あれ?」と思えることなんですよね。
ここで書いていること
法律の解説なら、専門家が書いたものが世の中にたくさんあります。正確で、丁寧で、間違いがない。私が同じものを書く意味はありません。
私が書けるのは、送り手側の都合です。
この文言はなぜこう書いてあるのか。なぜここだけ小さい字なのか。なぜ「限定」と入れたがるのか。11年、作る側にいたので、だいたい見当がつきます。
ときどき手口があまりに使い回しで、思わず愚痴が混じります。それも含めて読んでいただければ。
書いているのは、こんなことです。
- 実際にあった手口の分解と、どこで気づけたか
- 広告や勧誘トークで「ここを見てほしい」というポイント
- 巻き込まれてしまったときに、まず何をするか
- 相談先の選び方と、専門家に持っていく前の準備
お願いとお断り
ここに書いてあることは一般的な情報であって、個別の案件についての法的助言ではありません。
実際に困っている方は、必ず弁護士や司法書士、消費生活センターなど、しかるべき窓口にご相談ください。ここは、その窓口にたどり着くまでの手前を照らす場所だと思っています。
それから、私は完璧ではありません。間違いに気づかれたら、遠慮なく教えてください。直します。
二十代のころ、私はメディアで働きたかったんです。結局なれませんでした。
それが今になって、誰にも頼まれていないのに、こうして記事を書いている。遠回りにもほどがありますが、たぶんこれがやりたかったことなんだと思います。(ただの個人ブログですがw)
読んでくださる方が、誰かの置き書きを読む側で終わりますように。書かされる側になりませんように。
そう思いながら、今日も書いています。
関根 綾
